名古屋の街の中心、隣接する愛知県庁舎と並び立つ壮麗な建物をご存知でしょうか? それは、国の重要文化財に指定されている名古屋市役所本庁舎です。毎年11月3日「文化の日」には、普段は入れない庁舎の奥まで特別に一般公開され、多くの歴史ファンや映画ファンがこの名建築を訪れます。
この記事では、公開イベントの見どころと、この建物が辿ってきた波乱の歴史、そして数々の名作に登場するロケ地としての魅力をたっぷりとお届けします。
🏛️ 帝冠様式が生み出す、圧倒的なロケ地のオーラ
市役所本庁舎がなぜこれほどロケ地として愛されるのか。その秘密は、帝冠様式という独特な建築様式と、それに裏打ちされた重厚な歴史感にあります。
西洋の近代建築をベースに、中央の時計塔の頂部には、名古屋城を意識したかのような瓦屋根と、銅板製のシャチホコが輝きます。この和洋折衷の威厳ある姿が、映像作品の中で「国会議事堂」や「司法省」といった、日本の中枢機関の雰囲気を完璧に再現してくれるのです。
✨ 一般公開で見たい! ロケ地のハイライト
一般公開日には、多くのドラマや映画の舞台となったスポットを自分の足で辿ることができます。
• 北側・中央廊下:ドラマ『VIVANT』でのFBIの廊下や、NHK連続テレビ小説『虎に翼』での明律大学(本校舎)の廊下として、主人公たちが葛藤や決意を胸に歩いた格調高い廊下。全長100mにも及ぶ長い廊下に立てば、あなたも一瞬で物語の登場人物になった気分を味わえます。
• 正面玄関と中央階段:良質な大理石「小桜」が贅沢に使われた階段は、映画『SP 革命編』で緊迫したシーンの舞台となりました。

• 貴賓室・正庁:和風の格天井(ごうてんじょう)と大理石の壁が融合した空間は、伝統と権威を感じさせ、物語に深みを与えます。

📜 竣工から終戦まで:戦争を生き抜いた壮絶な歴史
名古屋市役所本庁舎は、昭和8年(1933年)に、当時の大都市名古屋の顔として華々しく竣工しました。しかし、その輝かしい誕生からわずか数年で、日本は戦時体制へと突入します。庁舎の歩みは、そのまま戦時下の名古屋の記録でもあります。
⚫︎ 空襲に備え、壁を黒く塗った悲しい歴史
戦争が激化し、米軍による空襲が現実味を帯びてくると、この美しい庁舎を守るための悲しい対策が取られました。
空からの視認性を下げ、爆撃の標的になるのを避けるため、外壁の美しいタイルやテラコッタは、コールタールのような黒い塗料で塗り固められてしまったのです。

美しい建築物を自ら隠さなければならないというこのエピソードは、戦時下の緊迫した都市の状況を今に伝えています。この建物が戦時下の行政中枢として物資統制や防空対策を担っていたことを物語る、重い事実です。
💥 奇跡的な存続と、戦後の機能維持
1945年(昭和20年)の名古屋大空襲では、名古屋城の主要部をはじめ、市街地の大部分が焼け野原となりました。しかし、この市役所本庁舎は、隣接する愛知県庁舎とともに、奇跡的に大きな損傷を免れました。
黒く塗られた壁に守られ、あるいは堅牢な鉄骨鉄筋コンクリート造の構造によって、戦火を生き延びたのです。終戦後、焼け残った庁舎はすぐに行政の中枢機能を再開し、混乱の時代における市民生活の復旧と、名古屋の復興を支える要となりました。
現在、外壁の黒い塗料は剥がされ、竣工当時の美しい姿を取り戻しています。しかし、この建物の隅々には、戦争の時代を乗り越えた強い物語が刻み込まれているのです。
💡 次回の公開とロケ地巡りへ
文化の日の一般公開(次回は2026年11月3日頃を予定)は、この歴史を肌で感じ、ロケ地の迫力を体験する最高のチャンスです。次回はぜひ、歴史的価値とロケ地としての魅力を併せ持つ名古屋市役所本庁舎を訪れ、その重厚な雰囲気を味わってみてください。


	        	        		
	        	        		
	        	        		
	        	        		
	        	        		
	        	        		
	        	        		
	        	        		




















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