普段何気なく使っている日本の硬貨の中で、五円玉だけは額面が**「五円」**と漢数字で表記されています。他の硬貨がアラビア数字(1、10、50など)を使っているのに対し、なぜ五円玉だけが特別なのでしょうか?
この硬貨に隠された謎と、その背景にある歴史を深掘りします。
🧐 1.硬貨の製造元「造幣局」の見解
まず、硬貨を製造している造幣局(独立行政法人)は、この漢数字表記について、特別な理由はないとしています。
• 法的な義務はない: 額面を漢数字にしなければならないという、法律上の規定や明確な決まりはありません。
• デザイン上の選択: 額面の書体を含めた全てが硬貨デザインの一部であり、当時の制作側が**「五円」という漢数字表記をデザインとして選択した結果**である、という見解です。
つまり、特別な理由があって「五円」になったのではなく、デザインとして選ばれたという位置づけです。
📜 2.漢数字が残った二つの背景
「特別な理由はない」という言葉の裏には、戦後の硬貨のデザイン様式が変化する時代の状況が影響しています。
📌 背景① 時代の「過渡期」の名残
五円玉(穴あきの黄銅貨)が最初に発行されたのは、戦後間もない**1949年(昭和24年)**です。
• 旧様式: 戦前までの日本の硬貨は、額面が漢数字で表記されるのが一般的でした。
• 新様式への移行: 戦後、国際化やデザインの刷新に伴い、硬貨はアラビア数字を導入し始めます。
• 五円玉の位置づけ: 五円玉は、この旧様式から新様式へと切り替わる、非常に早い段階でデザインされた硬貨です。
このため、五円玉のデザインには、旧様式の名残として漢数字が残されたと考えられています。実際、五円玉の次に発行された十円玉(昭和26年)からは、すぐに「10」というアラビア数字が採用されています。
📌 背景② デザイン上のバランスの配慮
五円玉の独特の図柄構成も、漢数字採用の理由の一つと推測されます。
• 五円玉のデザイン要素: 表面には「稲穂」「水」「歯車」という日本の産業を象徴するモチーフが、裏面には「日本国」と製造年が刻印されています。
• 漢字表記の統一: 裏面の「日本国」が漢字であるのに対し、額面も「五円」と漢字で表記することで、デザイン全体に漢字ベースの統一感とバランスを持たせようとした可能性があります。
💎 3.硬貨に製造年が刻印されている理由
話は変わりますが、硬貨にだけ製造年が刻まれているのも歴史的な理由からです。
• 歴史的理由: 明治時代の初期、硬貨は金や銀などの貴金属でできており、製造年によってその金属の含有量(価値)が異なりました。そのため、製造年を刻印することで価値を保証する必要があった、その名残です。
• 物理的理由: 硬貨は金属製で耐久性が高く、何十年も使われるため、製造年を刻印しておくことに意味がありました。一方、紙幣は短期間で交換されるため、製造年の印字はありません。
✨ まとめ:偶然の産物としての「五円」
五円玉の「五円」という漢数字表記は、厳格な法令ではなく、戦後の硬貨デザインが新しい様式に切り替わる過程での、特別なデザイン選択の結果だったと言えるでしょう。この時代の流れが生んだ「偶然の産物」が、今も私たちの手元に残り続けているのです。
























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