近年、新車にスペアタイヤ(応急用タイヤ)が標準搭載されることは稀になりました。ほとんどの車種で「パンク修理キット」が標準装備され、スペアタイヤは新車注文時限定のメーカーオプション設定となっています。
「購入後にキャンプやアウトドアを始めた」「中古車を買ったがスペアタイヤがない」といった理由で、後からスペアタイヤの必要性を感じた方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「スペアタイヤを後付けしたい」とお考えの方に向けて、その具体的な方法、かかる費用、そして安全に運用するための注意点を徹底的に解説します。
スペアタイヤが標準装備から消えた理由
なぜ、かつての必需品だったスペアタイヤは姿を消したのでしょうか。主な理由は以下の3点です。
1. 道路環境の改善とパンク修理技術の進化
• 道路状況の改善: 舗装されていない林道や砂利道が減少し、バーストなどの重大なタイヤ損傷リスクが大幅に低下しました。
• パンク修理キットの性能向上: 近年のパンクのほとんどは、道路に落ちている釘やネジが刺さることによるものです。標準搭載されているパンク修理剤であれば、これらの小さな穴は簡単に、迅速に修理が可能です。
2. 車両の軽量化と燃費向上
• スペアタイヤはホイールを含めるとかなりの重量になります。これを削減することで、車両の軽量化が実現し、結果的に燃費の向上につながります。
• また、重いものがトランクにあると、ブレーキ制動距離の延長や走行安定性への影響も考慮する必要があり、車に重いものを載せない方が都合が良いという考えが主流になっています。
3. コスト削減と実用性の低下
• スペアタイヤを一度も使わずに廃車を迎える車が多く、そのコストと積載スペースが無駄と判断されました。
最初に知っておきたい!新車時と後付けの価格差
新車注文時にスペアタイヤをオプションで装着する場合、価格は非常に安価です。例えば、トヨタ車のほとんどで、応急用の細いタイヤ(テンパータイヤ)と最低限の工具一式が約11,000円〜16,500円で取り付け可能です。
この安価な価格設定は、「パンク修理キットなどの部材がレス化することによる差額設定」であるためです。
しかし、購入後に後付けする場合は、部品を個別に購入する必要があるため、費用が跳ね上がります。
【重要】スペアタイヤを後付けする方法と費用(概算)
自動車購入後にスペアタイヤを後付けすることは可能です。ただし、費用は新車時とは全く異なります。
後付けにかかる費用の内訳と概算は以下の通りです。
1. スペアタイヤ(ホイール付き)の費用
車種に適合するサイズのテンパータイヤ(ホイール付き)が必要です。
• 価格帯:約27,000円〜50,000円
• 注意点: テンパータイヤはサイズが細いため、必ず適合するホイールとセットで購入する必要があります。
2. 固定用部品(収納スペースの部材を含む)の費用
タイヤをトランク床下などに安全に固定するための専用ネジ、ブラケット、工具類です。
• 価格帯:約15,000円〜30,000円
• 多くの車では、パンク修理キットを収納するための部材が床下に組み込まれており、スペアタイヤを搭載するためにこれらの部材を交換・追加する必要があります。
3. その他の追加費用
• 収納カバー部品: 室内設置スペースがある車種で、タイヤ全体を覆うカバーが必要な場合、約20,000円程度かかることがあります。これはゴムの臭い対策にもなります。
• 取り付け工賃: 販売店や整備工場に依頼する場合、作業の難易度に応じて約5,000円〜15,000円程度かかる可能性があります。
• 最低限の固定ネジ: 室内トランクにそのまま置く場合に、最低限の固定を行うネジのみを購入する場合は約2,000円ほどで購入できます。
後付けの合計金額の目安
全ての部品を後付けする場合の合計費用は、概ね約42,000円から80,000円ほどになります。やはり、最初からメーカーオプションで注文しておいた方が圧倒的に安価であることは間違いありません。後からどうしても取付したいという方は、一度販売店にご相談ください。
【安全第一】スペアタイヤの後付けに関する重要事項
Q. スペアタイヤのみをトランクに置いておいても大丈夫?
A. 危険です。必ず固定しましょう。
スペアタイヤを固定せずトランクに放置するのは非常に危険です。特に衝突事故の際、重いスペアタイヤが車内を飛び回り、乗員に重大な怪我を負わせる凶器となる可能性があります。
安全を第一に考えるなら、最低限、スペアタイヤを床に固定する専用のネジ(約2,000円ほど)だけでも取り付けることを強く推奨します。
スペアタイヤの選び方(適合確認の重要性)
スペアタイヤを選ぶ際、最も重要なのは適合するサイズと仕様です。
1. 車検証を準備する: モデル、年式、グレードで適正なタイヤサイズやホイールの**穴数(4穴、5穴、6穴)**などが異なります。正確に調べるためには、車検証の情報(型式、初度登録年月など)が必須です。
2. カタログやメーカーサイトで確認: 当時のカタログやメーカーの公式ホームページでオプション設定されていたスペアタイヤのサイズを参照しましょう。
3. ディーラーに相談: それでも不明な場合は、お乗りの車を取り扱っているディーラーに車検証を手元に用意して電話で相談するのが最も確実です。
まとめ
パンク修理キットでは不安を感じる、キャンプや渓流釣りなどで非舗装路を走る機会が増えたという方は、スペアタイヤの後付けは非常に有効な選択肢です。
費用は新車時より高くなりますが、万が一の安心と安全を確保できるメリットは計り知れません。
後付けをご希望の方は、まずは車の販売店や専門の整備工場に一度相談し、適合部品の価格と取り付け工賃の見積もりを取ってみることをお勧めします。
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