日本のシンボル、富士山。その標高が「3776メートル」であることは誰もが知っていますが、この数字は最初から決まっていたわけではありません。時代ごとの測量者たちの努力や技術の進化により、その高さの記録は何度も移り変わってきました。
なぜ、富士山の高さの記録はこれほどまでに変動してきたのでしょうか?
1. 昔の測量と記録の変遷(標高の移り変わり)
江戸時代から明治にかけて、富士山の標高は様々な人物や組織によって測定され、その度に「日本一の高さ」が更新されてきました。
• 1727年(享保12年):
• 3,895メートルという記録があります。福田某(福田履軒とされる)が、吉原から三角法の原理で測定した最初の記録の一つです。
• 1816年(江戸時代):
• 3,928メートルという記録を残しました。日本全国を歩いた伊能忠敬が、地上からの距離と角度を測って計算した値です。現代の値とは約150mの誤差がありますが、当時の技術水準を考えると驚異的な精度です。
• 1828年頃(江戸時代):
• 約3,794.5メートルという記録があります。オランダ人医師のシーボルトが、気圧の変化を利用する気圧高度計を用いて測定しました。
• 1887年(明治20年):
• 3,778メートルと公的に決定されました。陸軍参謀本部陸地測量部が、近代的な三角測量を用いて「剣ヶ峰」の標高を算出したものです。
• 1926年(大正15年):
• この年の測量を基礎とし、現在の公称値である3,776メートルが定着しました。
2. 現在の標高「3776メートル」に隠された真実
多くの人が知る「3776メートル」は、最高地点の標高をメートル単位で丸めた公称値です。
• 精密な値: 最新の測量技術による三角点の標高成果は、近年では3,775.51メートルなど、小数点以下の数値で管理されています。
• 基準点の変化: 2014年には、測量技術の進歩に伴い、この小数点以下の値が修正されました。
3. なぜ「高さの記録」は変わり続けるのか?
富士山の記録が変動してきた主な理由は、測量の精度向上と山のリアルな動きの二つにあります。
• 測量技術の進化: 昔の測量器械から、GPSを活用した最新の技術へと進化したことで、「ゼロメートル」の基準がより正確になり、過去の記録との差が明らかになりました。
• 地殻変動の影響: 富士山は活火山であり、地下のマグマの活動や地殻変動によって、山体はわずかずつですが、隆起(高くなる)したり沈降(低くなる)したりしています。この現実の変動に合わせて、記録も修正される必要があります。
4. 噴火が起きたらどうなる?
私たちが目視で「富士山の高さが変わった」と認識できるほどの大きな変化は、大規模な噴火を伴う場合です。
• 噴出物の堆積があれば、山はさらに成長して高くなる方向に作用します。
• 山体崩壊や巨大な火口の形成があれば、山の一部が失われ、標高が低くなる方向に作用します。
しかし、これらのわずかな変化は、精密な測量器械を使わなければ分かりません。私たちが目にする雄大な富士山の姿は、今後も変わらず、日本の最高峰であり続けるでしょう。
昔よく登った北アルプスの剣岳。最初は3003mと300m級の山でしたが、2999mになってしまいました。4mにちょっと悔しい思いをしたりして・・・。
技術の進歩や時の流れで山の高さが変わることもあるんですね