はじめに:三大美人 vs. 三大不美人の謎
古くから「日本三大美人」として京美人(京都)、秋田美人(秋田)、博多美人(福岡)が知られています。その対極として、まるで対になるかのように俗説で語り継がれてきたのが、**日本三大不美人(三大ブス)**という都市伝説です。主に1980年代以降、名古屋、水戸(茨城)、仙台の3都市がその不名誉なレッテルを貼られてきました。
この記事では、三大不美人の地域がなぜそう呼ばれるようになったのか、それぞれの由来を深掘りし、この都市伝説の歴史的背景と真相を徹底解説します。
1. 名古屋ブスの由来:三英傑による「美人狩り」説
東京、大阪に次ぐ中部地方の大都市である名古屋が「不美人の産地」と噂される背景には、戦国時代の有名な説が関わっています。
この説は、尾張(名古屋)出身の三英傑(織田信長、豊臣秀吉、徳川家康)が、天下統一の過程で代わる代わる地元の美人を連れ去った、というものです。
• 織田信長:地元の美人を安土城へ連れていく。
• 豊臣秀吉:残った美人の娘たちを大阪城へ連れていく。
• 徳川家康:天下統一後、さらに残った女性を江戸へ連れていく。
結果的に名古屋には「あまりもの」の女性しか残らなかった、という極めて失礼な内容ですが、歴史上の大物を絡めることで、噂話としてのインパクトを強めました。
2. 水戸ブスの由来:秋田美人を生んだ「転封」説
茨城ブスとも呼ばれる水戸の由来は、江戸時代初期の重要な藩主交代にあります。
関ヶ原の戦いの後、日和見の態度をとった佐竹義宣(もともとの水戸領主)に対し、徳川家康は怒りを買って秋田へ転封(国替え)を命じます。水戸には、徳川家康十一男の徳川頼房が入封しました。
このとき、水戸を追い出された佐竹義宣が、水戸中の美人を全て引き連れて秋田へ向かったという噂が広まりました。
この話は、「水戸には不美人が残り、秋田には美人が集まった」という構造で語られ、秋田美人伝説の裏話としても機能することで、より多くの人に記憶されることになりました。
3. 仙台ブスの由来:「高尾の祟り」と作家の影響
仙台が三大不美人都市と呼ばれる理由には、仙台藩伊達家が深く関わる二つの説があり、特に「呪い」の説が有名です。
説1:伊達政宗の「見栄っ張り参勤交代」
初代藩主・伊達政宗が、参勤交代の際に、見栄えを良くするために仙台中の美人を江戸へ引き連れて行ってしまったという説です。
説2:吉原花魁「高尾の祟り」
さらに広まったのが、3代目藩主・伊達綱宗と吉原随一の花魁・高尾太夫にまつわる話です。
綱宗が高尾太夫に一方的に熱を上げるも相手にされず、怒りのあまり彼女を殺害したとされます。その高尾太夫の怨念により、仙台には美人が生まれなくなったという恐ろしい呪いの説です。
この**「高尾の祟り」説は、戦後の有名作家坂口安吾がエッセイ『美人の消えた街』**で取り上げ、「仙台に美人がいないのは高尾の祟りである」と記したことで、全国に広く浸透しました。
4. 都市伝説の真相:なぜ「名古屋・水戸・仙台」は選ばれたのか?
結論として、「三大不美人」の噂は、**全く根拠のない作り話(都市伝説)**に過ぎません。現在、これらの都市に美人が少ないという事実はありません。
では、なぜ名古屋、水戸、仙台という特定の地域が、この不名誉なレッテルを貼られ、長く語り継がれてきたのでしょうか。
① 地域間の対抗意識と「やっかみ」
この都市伝説が広まった最大の要因は、地域間の強い対抗意識にあると考えられます。
• 名古屋と水戸:徳川御三家の本拠地であり、政治的・経済的に力を持った都市。
• 仙台:藩主・伊達政宗が徳川家に匹敵するほどの知名度と権威を誇った都市。
三大ブスに選ばれた地域は、いずれも歴史的にプライドが高く、他地域から注目されやすい大都市でした。その成功や権威に対する妬みや皮肉として、「あの街は立派だが、女性はイマイチだ」という噂が創作されやすかったのです。
② 著名作家による「公認」効果
作家・坂口安吾が、仙台の「高尾の祟り」をエッセイというメディアで取り上げた影響は計り知れません。これにより、ローカルな噂話が、著名人の言説として半ば「公認」され、全国的な俗説へと変貌しました。
③ 自虐ネタとしての文化定着
現代では、これらの不名誉な噂は、地域にとって一種の**「自虐ネタ」**として機能しています。この都市伝説を語ることは、かえってその地域を話題にし、個性を際立たせる役割を果たしているのです。
この「三大ブス」の噂は、単なる容姿の話ではなく、日本の歴史的な権力構造や地域間の感情が作り出した、興味深い文化遺産と言えるでしょう。
あなたの身近にも、このような地域の歴史にまつわる面白い都市伝説はありますか?
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