国宝第一号であった名古屋城。
戦火で燃えおちた天守閣をコンクリートで再建してからはや60年。
江戸時代に建築されたままの木造での復元を打ち出してから数年が経ってしまった。ついに2028年秋に復元工事が完了するとの見通しがでた。
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もともとは河村名古屋市長は東京オリンピックにあわせた2020年の復元をうたっていた。
しかしその時から無理がある工期だと感じていた。その後、2022年復元完成に計画を練りなおし。
そこで問題となったのは400年以上前に組み上げられた石垣の保全問題であった。
加藤清正や福島正則といった大名たちが普請して作り上げた名古屋城。もちろん現在まで残っているものといえば、西北隅櫓をはじめとする3つの小天守と言われる隅櫓や一部の門、それに石垣などである。
苗木城や岩村城などは天守がなくとも石垣だけでも一見の価値があるほどだ。名古屋城も天守や本丸御殿にばかり目がいくが石垣も他の城趾を圧倒するほどの存在感である。
名古屋城木造復元にあたって石垣部会の指摘を、しっかり受け止めて対策をとってこなかった。
石垣の重要性や文化財としての価値をもっと理解していればこのような短期間での工期での復元はもともと不可能であったと思われる。
現在の天守の取り壊し後に、天守のある石垣の調査や保全をしっかりやることが次の木造名古屋城の建築の基礎である。
名古屋市当局は文化庁や有識者らと工期をめぐって協議を重ねている。
現在のコンクリート製の天守の解体に伴い、土台部分の遺構への影響がどれほどあるのかという調査をまずはしなければならない。
また太平洋戦争での名古屋大空襲の際の石垣の損傷や長い期間を経た経年劣化などの補修なども視野に入れて工期の算出をしなければならない。
これら全てをクリアして更に文化庁への許可申請をしていくとなると、2028年秋の完成という見通しがでてきた。
再々検討して2022年の完成を目指していた名古屋城木造復元工事ではあるが、さらに5年以上も工期遅れが発生する。
しかし現状では耐震性に問題ありとした天守閣の入場禁止措置が取られているだけで本格的な工事には取りかかっていない。
有識者らによる『特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議』にまずは2028年までの工期で事業をすすめるという案を提示してから文化庁への許可申請という流れなので、まずは有識者会議に諮り承認をもらわないことには物事が進まない。
これ以上の工期遅れは名古屋城木造復元事業自体の白紙化も懸念されることとなる。
以前は木造復元ありきで進んでいたが、現在ではまずは石垣保全重視の方針に転じている。
石垣部会の指摘を受け入れ史跡保護のガイドラインを作成して、名古屋市側と部会側の連携強化がすすんでいっている。
まだまだ先にはなってしまったが、木造復元への道筋が僅かながら開いていっている。