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時代を超えた「二刀流の系譜」:大谷翔平と比較して知る、元祖・悪太郎エース堀内恒夫の偉業

現代の我々が忘れてはならない伝説

野球界の話題は、今やロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が中心です。史上初の投打「規定到達」や本塁打王と二桁勝利の同時達成など、彼の「二刀流」はまさに現代の奇跡。しかし、日本の野球史を紐解くと、その偉業に匹敵、あるいはある一点においては上回るほどの投打の才能を持った「元祖二刀流」が存在します。

それが、読売ジャイアンツのV9時代を支えた大エース、堀内恒夫さんです。

究極の爆発力:「ノーノー&3連発」の衝撃

大谷選手の凄さを語る時、「10奪三振で3本塁打」というような一試合の投打の支配力が引き合いに出されます。しかし、堀内さんが1967年に達成した記録は、そのインパクトにおいて今なお語り継がれる伝説です。

なんと、彼は広島カープを相手にノーヒットノーランを達成した試合で、打者としても3打席連続ホームランを放っているのです。

ノーヒットノーランは投手の究極の目標。3打席連続ホームランは打者の夢。この二つの偉業を同じ日に、同じ人物が成し遂げた例は、日米のプロ野球史上、堀内恒夫さんただ一人です。この「一日の爆発力」という点では、大谷選手でさえ、まだ堀内さんの記録に到達していません。

通算成績に刻まれた二刀流の痕跡

堀内さんが「二刀流」を公言したわけではありませんが、その通算成績には非凡な打撃センスがはっきりと刻まれています。

投手としてマウンドに上がりながら、現役18年間で放ったホームランは通算21本。これは並の野手のキャリア通算本塁打数に匹敵します。打撃練習が制限される投手でありながら、これほどの長打力を示した事実は、もし彼が打者に専念していたら、「350本塁打を打てる打者になっていた」という想像にリアリティを与えます。

一方、本業である投手としても、彼の功績は絶大です。

• 通算203勝

• 沢村賞2回

• 新人王

• 最優秀防御率1回

という輝かしい実績を残し、200勝投手として野球殿堂入りを果たしています。特に年間300イニング以上を投げ抜いた驚異的なタミナスは、現代の分業制野球では考えられない偉業であり、大谷選手の持つ「支配力」とは異なる、堀内さんの**「タフネス」と「完投能力」**が時代の頂点に立っていた証です。

「悪太郎」の強烈なメンタリティ

堀内さんの強さは、単なる技術だけでなく、その「悪太郎」の異名が示す強烈なメンタリティにもありました。

生意気なルーキーとして、当時のスーパースター王貞治さんに鉄拳制裁を受けたエピソードは有名ですが、その強気の姿勢こそが、ノーノー達成時のような極限の勝負どころで、投打両面で力を発揮できた要因でしょう。現代のMLBで活躍する大谷選手の、常に冷静沈着に見える「平常心」とは対照的な、闘志をむき出しにした情熱的なヒーロー像が堀内恒夫という存在でした。

時代を超えて繋がる「野球の夢」

堀内恒夫さんは、野球のルール上「二刀流」が認められていない時代に、その才能を抑えきれずに投打両面で結果を残し、後楽園球場を熱狂させました。大谷翔平選手は、その堀内さんの「単発的な偉業」を、MLBという最高の舞台で「持続的な偉業」へと昇華させ、世界を驚かせています。

二人の偉業を比較することは、どちらが優れているかを決めることではありません。それは、時代を超えて「野球の可能性」が進化し続けている証であり、日本の野球が育てた非凡な才能の系譜なのです。大谷選手の活躍を楽しむ現代のファンだからこそ、堀内恒夫という伝説のエースが放った一瞬の閃光の偉大さを、今一度かみしめたいものです。

kinsyachi

トヨタディーラーで10年営業マンを経験。 その後、現職である保険代理店へと転職。 ディーラーにいたからこそわかるお得な買い方を伝授します! 最近は神社仏閣めぐりに毎週のように出かけ、御朱印集めにはまってます。

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kinsyachi
Tags: 雑学