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世界で年間1000個の隕石が落下しているという。しかしそのほとんどは海の上やジャングルや奥深い山の中に落ちている。
人が住んでいる地域、ましてや市街地に落下する確率はグンと下がる。
その中でも市街地に火の玉のように落下していく様子が目撃されている隕石は世界でもほとんど例がない。
しかし名古屋市南区にあるこの星崎という町には過去に何と2度にわたって隕石が降ってきたという世界でも例のない町である。
637年に隕石が降ってきた様子が本星崎町に鎮座する星宮社の縁起書に書かれている。
舒明天皇の時代に「七星が天から降るという御神託があったので往古の千竈郷である当地に社を建立した」という言い伝えがある。
これが1度目の隕石落下ではないかと言われている。そしてその時からこの地は星崎村と呼ばれている。
2度目は寛永9年(1632)8月14日と記録に残っている。村瀬六兵衛というものが田んぼで作業をしていると、突然の轟音とともに隕石が降ってきたという。
この様子は『尾張名所図会』の付録である『小治田之真清水』に詳細に描かれている。
この隕石は「星石」と呼ばれのちに喚続神社(呼続神社)に寄進され、御神体として祀られていた。
隕石が降ってくる様子は世界各地で伝説となって残っている。
火の玉が降った、神が舞い降りた、天が怒った‥‥。などいろいろな伝説となって現代に伝わっている。
昭和51年に国立博物館の調査で各地の神社や寺院に伝わる御神体を隕石の可能性があるとして調べた結果、この星崎町に伝わる伝説の星石が正真正銘の隕石であると鑑定された。
これは当時では世界最古の落下年代が判明している隕石であった。この隕石を「南野隕石」と名付けることとなった。しかしこの3年後に福岡県直方市にある「直方隕石」が861年に落下していたことが判明し世界最古の称号は直方隕石に譲ることとなった。
この貴重な隕石だが、現在は呼続神社の御神体として祀られているため一般公開はしていない。
残念だが御神体としての存在なので仕方がないところだ。
全国の神社や仏閣には古くからの伝説、伝承により「空から降ってきたもの」が多数存在する。
当時の人々には畏怖されるべき存在であったその「モノ」が実は隕石だったというパターンは非常に多い。
世界でも歴史的に古くから空が明るくなって星が落ちてきたという昔話は多数ある。そのほとんどは現代の科学的な調査をされていないままとなっていることが多い。
伝説だからこその楽しみが含まれているので、未調査のままの方がいいのかもしれない。
*画像は尾張名所図会から引用